Q8 法人形態の選択基準 法人の形態はどのように選べばいいのですか?

法人形態を大きく分けると、農事組合法人と会社法人に分けられます。

1 農事組合法人
まず、農事組合法人は、農業の協業による共同利益の追求を目的とする組織です。このため、構成員の公平性が重視されており、議決権が1人1票制、常時従事者の構成員外の雇用に制限があるといったことが特徴的な点です。また、構成員が3人以上必要であることも特徴です。
したがって、農業経営と同時に、農業施設の共同利用や農作業の共同化を主として行う場合、すなわち構成員の出資口数や規模等が等質的であり、利害関係が相反する可能性が低く、機動的な意志決定がそれほど必要でない場合は農事組合法人の形態を選択することも一案と思われます。

2 株式会社
会社法人のうち株式会社は、営利を目的とする法人で議決権が1株1票制であり、出資口数の制限もありません。そのため、機動的な法人経営が行うことが可能です。均等出資にすれば議決権も均等になります。社員(株主)は、会社に対して有限の出資義務を負うだけで、会社の債権者に義務を負わず(間接有限責任)、会社財産にその信用の担保を置く物的会社です。

3 合同会社
集落営農については、これまで農事組合法人による設立が多く見られましたが、今後は合同会社も選択肢に加わります。合同会社については1人1議決権による社員全員一致によるのが原則となっています。株式会社と同じく、社員の責任は間接有限責任です。

4 選択の基準
法人はスケールメリットを追求し、より企業的な農業経営を展開するうえで適した形態です。より多くの人材と資金が集まることで、個人経営よりも大きな事業ができます。組織こそ企業の本質といえます。
しかし、組織の運営にはシステムとリーダーが必要です。誰がリーダーになっても走れるシステム(仕組み)のうえで、たくさんの人間を引っ張っていけるリーダーがいて初めて運営がうまく行きます。
会社法人か農事組合法人かの選択基準は、構成員のおかれている状況と大きくかかわってきます。中山間地など経営条件の厳しい地域、担い手の不足する地域で仲間が力を合わせて行いこうという場合、農業施設の共同利用や農作業の共同化を主として行う場合などには、農事組合法人の方が関係者の理解を得られやすいかもしれません。
しかし、経営にスピードが求められる今日の経済情勢の下では、議決権が1人1票である農事組合法人は組織の合意形成に時間を要する可能性があることについて留意して下さい。
また、集落営農では、法人設立後年月を経るとともに構成員によって法人運営への参画の度合いが異なってくることや、経営に関する意識の変化が想定されますが、合同会社による構成員全員一致の原則や農事組合法人における一人一票制が、法人経営の機動的な運営や発展の妨げになりかねません。
このため、多数の農地所有者を構成員とする集落営農において、法人経営の機動的な運営や発展を優先する場合には、株式会社という選択肢もあります。
いずれにしても、現実にはどちらも利益を追求することに変わりはありません。それなくしては、経営体として存続できないからです。

5法人形態を選択する場合の留意事項
法人の形態にはそれぞれ特徴・制限があり、どの形態を採用するかは、集落の誰が出資し、どんな農業経営を目指すのかといった経営ビジョン・経営方針、組織運営方針等で決定します。
法人形態別の特徴・制限と集落営農組織の運営とを考え、どの法人形態が望ましいのかを検討してください。

項目 農事組合法人 株式会社
法人形態別の特徴との関係 議決権;一人一票制
*集落営農組織の議決方法(多数決原理)と同様の運営方法であるため、集落-農場型(集落ぐるみ型)で採用しやすい。
目的;利益追求
*集落の相当数の農家が出資することは可能です。
均当出資すれば議決権も均等になり、従来の集落営農組織と同様の運営が可能となる。
労働報酬・所得申告 剰余金の処分方法;従事分量配当が可能。
*組合員への「従事分量配当」は、税務上「農業所得」として申告する。組合員の多くが兼業農家の場合、この方法がベター。
兼業農家の場合、法人からの給与は「従たる給与」として確定申告する。
*集落営農の法人から給与を受けるということは「勤務先」からいえばアルバイトにあたります。あらかじめ勤務先から理解を得ておくことが必要です。
組合員の労災保険 従事分量配当は税務上、農業所得であり、組合員は「労働者」でない。
*労災保険へは原則加入できない。
出資の有無に関わらず「給与支払い」の実態があり、「労働者」の判断ができる。
*労災保険への加入が可能
役員の労災保険 「特別加入」による。
*役員報酬の支出等が必要"
「特別加入」による。
想定される集落営農組織のタイプ ・集落-農場型(集落ぐるみ型)
(集落協業経営方式等)
・オペレータ型
(集落の多くの農家が出資して、特定の者だけが取締役会を構成して経営するタイプ)
・担い手委託型

【労災保険】
労災保険は国が行う災害補償で民間が行う災害補償より手厚く保障されます。特に大きな事故で、片腕切断や半身不随等重大な後遺障害が残ったときなど、民間の保険では一時金で支払われますが、労災保険では一時金プラス年金という形で一生保障されます。

 

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