Q88 減価償却資産の耐用年数の変更について教えて下さい。

平成19年度、平成20年度の税制改正により、減価償却制度の改正が行われています。
農業関係分について取りまとめましたので、留意してください。

1 平成19年度税制改正
(1)償却可能限度額及び残存価格の廃止等

① 平成19年4月1日以後に取得された減価償却資産
償却可能限度額(取得価格の95%相当額)及び残存価格が廃止され、耐用年数経過時点に「残存簿価1円」まで償却できるようになった。

② 平成19年3月31日以前に取得された減価償却資産
減価償却費として必要経費に算入された金額の累計額が償却可能限度額に達している場合には、その達した年分の翌年分以降5年間で1円(備忘価格)まで均等償却することとされた。
〈適用時期〉この改正は、平成20年分以降の所得税について適用される。
【 算 式 】

(償却可能限度額)
◎償却費の額 = ( 取得価額 - 取得価額の95%相当額 - 1円 ) ÷ 5
※年の途中で事業の用に供した場合などには、「本年中に事業に使用していた月数/12」を乗じる。」

③ 平成19年4月1日以降に取得する減価償却資産の償却費の額の計算において適用される「定額法の償却率」及び「定率法の償却率」等が定められた。(耐用年数省令別表十)

(2) 新たな償却の方法
平成19年4月1日以降に取得する減価償却資産の償却の方法については、次の通りとされた。
また、平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産の償却の方法については、改正前の計算の仕組みが維持されつつ、その名称が、定額法は「旧定額法」に、定率法は「旧定率法」等に改められた。

① (新たな)定額法
新たな定額法は、減価償却資産の取得価額に、その償却費の額が毎年同一となるよう当該資産の耐用年数に応じた「定額法の償却率」(耐用年数省令別表十)を乗じて計算した金額を、各年分の償却費の額として償却し、所得の金額の計算上必要経費(あるいは損金)に参入する。
なお、耐用年数経過時点において1円(備忘価格まで償却する)
【 算 式 】

◎償却費の額 = 取得価額 × 定額法の償却率
※年の途中で事業の用に供した場合などには、「本年中に事業に使用していた月数/12」を乗じる。」

② (新たな)定率法
ア 新たな定額法は、調整前償却額(減価償却資産の取得価額(2年目以降の年分にあっては、未償却残高))に、その償却費の額が毎年一定の割合で逓減するように当該資産の耐用年数に応じた「定率法の償却額」((耐用年数省令別表十)を乗じて計算した金額)を各年分の償却額として償却し、必要経費(あるいは損金)に参入する。
【 算 式 1 】「調整前償却額≧償却保証額」の場合

◎償却費の額 = 期首末償却残高 × 定額法の償却率 ※年の途中で事業の用に供した場合などには、「本年中に事業に使用していた月数/12」を乗じる。」

イ また、この調整前償却額が償却保証額(当該減価償却資産の取得価額に「保証率」(耐用年数省令別表十)を乗じて計算した金額)に満たない場合は、最初にその満たないこととなる年の期首末償却残高を「改訂取得価額」として、その改訂取得価額に、その償却費の額がその後毎年同一となるよう当該資産の耐用年数に応じた「改訂償却率」(耐用年数省令別表十)を乗じて計算した金額をその後の各年分の償却費の額として償却し、所得等の金額の計算上必要経費に参入する。なお、耐用年数経過時点において1円(備忘価格)まで償却する。
【 算 式 2 】「調整前償却額<償却保証額」の場合

◎償却費の額 = 改訂取得価額 × 改訂償却率 ※年の途中で事業の用に供した場合などには、「本年中に事業に使用していた月数/12」を乗じる。

③減価償却資産の償却方法
(所得税法の適用の場合)
法定の償却方法は、原則として定額法、旧定額法である。
また、税務署長に届けをした場合、減価償却資産毎に定率法、定額法が選択できる。

(法人税法適用の場合)
平成19年3月31日以前に取得された減価償却資産については、法令改正前の従前の償却方法の中から、その採用している償却方法を原則として継続する。
平成19年4月1日以降に取得された減価償却資産については、新たな償却方法の中から選定

資産の種類 平成19年3月31日以前の取得資産 平成19年4月1日以後の取得資産
定められている方法 届出をしなかった場合のよるべき方法(法定償却方法)
建   物 旧定額法、旧定率法
(平成10年3月31日以前の取得建物は定額法)
定率法、定額法のいずれか 定率法
建物以外の有形減価償却資産(リース資産を除く) 旧定額法、旧定率法 定率法、定額法のいずれか 定率法

(3) 資本的支出があった場合の減価償却資産の取得価額の特例
減価償却資産について、平成19年4月1日以降に支出する金額のうちに資本的支出が(固定資産の使用可能期間を延長又は価額を増加させる部分の支出)があった場合には、その資本的支出は、支出金額を固有の取得価額として、既存の減価償却資産と種類及び耐用年数を同じくする減価償却資産を新たに取得したものとされ、その種類と耐用年数に応じて償却することとなった。
他方、既存の減価償却資産本体については、この資本的支出を行った後においても、現に採用されている償却方法により、償却を継続して行うこととなる。

また、以下の特例が講じられた。

○定率法を採用している既存の減価償却資産に資本的支出を行った場合
資本的支出を対象資産である既存の減価償却資産(「旧減価償却資産」)資本的支出(「追加償却資産」)双方について定率法を採用しているときには、資本的支出を行った事業の翌事業年度の開始の時において、その時における旧減価償却資産の帳簿価額と追加資産の帳簿価額との合計額を取得価額とする一の減価償却資産を新たに取得したものとすることができる。
この場合は、翌事業年度の開始の日を取得日として「旧減価償却資産」の種類及び耐用年数に基づいて償却を行う。
○平成19年3月31日以前に取得された既存の減価償却資産に資本的支出を行った場合
平成19年3月31日以前に取得した既存の減価償却資産に資本的支出を行った場合、資本的支出を行った年度において、従来通り、資本的支出の対象資産である既存の減価償却資産の取得価額に、この基本的支出の金額を加算することができる。ただし、この措置は、平成20年4月1日までの措置である。
また、一旦、その減価償却資産全体に対してその事業年度に償却費の計上を行った場合には、翌事業年度以降において、その加算した資本的支出を新たな資産の取得として平成19年4月1日以降に取得された資産に採用される新たな定率法等の償却方法を採用することはできないので注意すること。

2 平成20年度税制改正
(1)法定耐用年数の変更及び資産区分の見直し
減価償却資産の耐用年数等に関する省令(以下「耐用年数省令」という。)が改正され、機械及び装置を中心に実態に則した使用年数を基に資産区分が整理されるとともに、法定耐用年数の見直しが行われた。(以下、農業関係の主なものを記載)

 旧別表第七「農林業用の減価償却資産の耐用年数表」は、資産区分の見直しにより、別表第一及び別表第二に整理統合されたことから、削除された
② 別表第一「機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表」
次の有形減価償却資産が追加された。

種 類 構造又は用途 細 目 耐用年数 備考(旧区分・年数)
構築物 農林業用のもの 主としてコンクリート造、レンガ造、石造又はブロック造のもの
 果樹棚又はホップ棚
 その他のもの
主として金属造のもの
主として木造のもの
土管を主としたもの
その他のもの



14
17
14

10
旧別表第七「農林業用の減価償却資産の耐用年数表」からの移行
17
20
13又は15

10
器具及び備品 11 前掲のもの以外のもの きのこ栽培用ほだ木 生しいたけ用  2
その他のほだ木 4

別表第一 「機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表」の従前と同じ主な資産

種 類 構造又は用途 細 目 耐用年数 備考(旧区分・年数)
建 物 れんが造、石造又はブロック造のもの 事務所用のもの
店舗用、住宅用のもの
倉庫用、作業場用のもの
(一般用)
41
38
34
 
金属造のもの
(骨格材の肉厚が3ミリメートルを超え4ミリメートル以下のものに限る)
事務所用のもの
店舗用、住宅用のもの
倉庫用、作業場用のもの
(一般用)
30
27
24
 
金属造のもの
(骨格材の肉厚が3ミリメートル以下のものに限る)
事務所用のもの
店舗用、住宅用のもの
倉庫用、作業場用のもの
(一般用)
22
19
17
 
木造又は合成樹脂造のもの 事務所用のもの
店舗用、住宅用のもの
倉庫用、作業場用のもの
(一般用)
24
22
15
 
木造モルタル造のもの 事務所用のもの
店舗用、住宅用のもの
倉庫用、作業場用のもの
(一般用)
22
20
14
 
簡易建物 木製主要柱が10cm角以下のもので、土居ぶき、杉皮ぶき、リーフィングぶき又はトタンぶきのもの
掘立造のもの及び仮設のもの
10


 
車両及び運搬具 前掲以外のもの 自動車(二輪又は三輪自動車を除く)
小型車(総排気量0.66l以下のもの
 その他のもの
 貨物自動車
  ダンプ式のもの
  その他のもの
その他のもの






 

③ 別表第二「機械及び装置の耐用年数表」
 機械及び装置の区分について390区分から55区分に改正

番号 設備の種類 細 目 耐用年数 備考(旧区分・年数)
食料品製造業用設備   10  
25 農業用設備   乗用トラクター 8
耕運整地用機具 5
(ロータリー等)
栽培管理用機具 5
(田植機等)
防除用機具 5
穀類収穫調整用機具
(コンバイン等) 5又は8
飼料作物収穫調製用機具 5又は8
果樹、野菜又は花き収穫調製用機具 5又は8
農産物処理加工機具
(選果機等) 5又は8
家畜飼養管理用機具
(搾乳機等) 5又は8
運搬用機具(トレーラー等) 4
26 林業用設備   造林又は伐木用機具3又は6

④ 別表第4「生物の耐用年数表」
キウイフルーツ樹及びブルーベリー樹が追加されたほか、法定耐用年数の見直し等が行われた。

種 類 細 目 耐用年数 備考(旧区分・年数)
 繁殖用(家畜改良増殖法(昭和二十五年法律第二百九号)に基づく種付証明書、授精証明書、体内受精卵移植証明書又は対外受精卵移植証明書のあるものに限る。)
 役肉用牛
 乳用牛
種付用(家畜改良増殖法に基づく種畜証明書の交付を受けた種おす牛に限る。)
その他用









(農業用使役、小運搬用使役は削除)





 
かんきつ樹 温州みかん
その他
28
30
40
35
りんご樹 わい化りんご
その他
20
29
20
29
ぶどう樹 温室ぶどう
その他
12
15
10
12
(甲州ぶどうは削除)
なし樹   26 20
桃樹   15 12
桜桃樹   21 20
びわ樹   30 30
くり樹   25 25
梅樹   25 25
かき樹   36 35
あんず樹   25 20
すもも樹   16 15
いちじく樹   11 10
キウイフルーツ樹   22 (追加)
ブルーベリー樹   25 (追加)
茶樹   34 35
桑樹 立て通し
根刈り、中刈り、高刈り
18
18
13
みつまた  
こうぞ  
もう宗竹   20  
アスパラガス   11  

※馬、綿羊及びやぎも記載されているが、県内に飼育の事例が少ないので記載していない。
パイナップル、オリーブ樹、つばき樹、こりやなぎ、ラミー、まおらん、ホップも記載されているが県内に栽培例が少ないので、記載していない。

⑤ 別表第九「平成19年3月31日以前に取得をされた減価償却資産の残存割合表」
旧別表第十一「平成19年3月31日以前に取得をされた減価償却資産の残存割合表」が、別表第九とされ、同表の「別表第四に掲げる生物」の欄が次のとおり改正された。

種 類 細 目 残存割合 備考(旧残存割合)
別表第四に掲げる生物
 繁殖用乳用牛及び種付用役肉牛

 種付用の乳用牛

 その他のもの

果樹その他植物

20%

10%

50%
30%
5%

繁殖用役肉用牛50%
    乳用牛20%
種付用役肉牛20%
   乳用牛10%
      50%
      30%
      5%

※馬、綿羊及びやぎも記載されているが、県内に飼育の事例が少ないので記載していない。

(2)改正後の耐用年数の適用時期
改正後の耐用年数は、既存の減価償却資産を含め平成20年4月1日以後に開始する事業年度に適用される。

3 減価償却制度の変更に伴う償却費の計算の具体例
(1)農業用機械の事例
①法人経営
自脱型コンバイン:取得価格3,000千円
償却方法    :定率法、旧定率法
法人事業年度  :4月~3月

法人事業年度  :4月~3月

  ケース4
平成20年4月1日取得
適用 定率法
耐用年数 7年
償却率 定率法償却率0.357 改訂償却率0.5
保証率0.5496(償却保証額164,880円)
平成21年3月31日 1年目償却額 
 1,071,000円
(取得価額×0.357)
(償却累計額)

1,071,000円
(未償却残高)

1,929,000円
平成22年3月31日 2年目償却額
  688,653円
(1,929,000円×0.357)


1,759,653円


1,240,347円
平成23年3月31日 3年目償却額
  442,804円
(1,240,347円×0.357)


2,202,457円


797,543円
平成24年3月31日 4年目償却額
  284,723円
( 797,543円×0.357)


2,487,180円


512,820円
平成25年3月31日 5年目償却額
  183,076円
( 512,820円×0.357)


2,670,257円


329,744円
平成26年3月31日 6年目償却額 164,872円
329,744円×0.357=117,719円<償却保証額164,880円
329,744円×改定償却率0.5=164,872円



2,835,129円



164,872円
平成27年3月31日 7年目償却額 164,872円
329,744円×改定償却率0.5=164,872円
 → 164,871円


2,999,999円


1円

 

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